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小 次の日に投稿しました 2017-6-11 23:25
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三国志にまつわる恐い話……
蜀の丞相、諸葛亮はこの日驚くべき報告を耳にする。
「丞相様にお伝え申し上げます! さきほど早馬にて綿陽に多数の魏軍が現れたとのこと。すでに一部戦闘状態である模様です!!」
「馬鹿な前線が抜かれただと!? 規模はいかほどか?」
「はっ! およそ50万かと」
「……むう。大至急軍を編成せよ、討って出るぞ! 率いておる魏将は誰か?」
「はっ! それが……」
言いよどむ伝令兵の顔がみるみる青ざめていく。
その顔色と怯えたような声色から、諸葛亮は奇妙な違和感を覚えた。
「どうした? 分からぬのなら良いぞ」
兵はしばらく顔を伏せていたが、意を決したように面を上げ、こちらを確かめるかのように言葉を紡いだ。
「…丞相さまにございます」
「何だと!?」
「丞相様でございます……にわかに信じられぬ事ですが、攻城軍と接した者の報告では、率いていたのは丞相さまであったと…」
「戯れ言を申すな!」
あまりの突飛な発言に、思わず言葉を荒げてしまった諸葛亮であったが、伝令のただならぬ様子から嘘を吐いているようには感じなかった。
「さらに各地の砦にて敵軍を指揮する丞相様が複数人いたと、報告がございました」
全くどういう事であろうか。自身の計り知れない何かが前線で起きている。
「……私も出陣するぞ」
こうなると却って興味が湧いて来る。敵は妖の類なのだろうか————
————綿竹城に辿り着いた諸葛亮は、火の手の上がる綿陽砦を背後にし、多数の軍勢がこちらに進軍してくるのを目の当たりにした。
魏の軍旗に混じり、悠然と掲げられている亮の軍旗とそれを指揮する自分と全く同じ姿の人間が5人。
諸葛亮は己自身の何かが崩壊する感覚を得た。
「これは夢なのか…」
現実と夢想の狭間にいるかのような感覚の最中、諸葛亮はさらに耳を疑う報告を受ける。
「急報です! 南より呉の軍勢多数! 誤報かと思われますが、軍勢の中に五虎将並びに劉備さまのお姿があったと……」
「馬鹿な……」
この日を境に諸葛亮は自身と自身の幻影、そして敬愛する主君と同胞である将軍達との闘いに明け暮れたのである。
「私はこの世の理はおよそ解明したつもりでいた……しかし、すでに私の知らぬ大きな何かが中華を変貌させていた」
もし史実がゲームのように突然なってしまったら、武将達は肝を冷やすでしょうね……という話でした。駄文長くなりスミマセン。
S19
にゃとり